Archive for 2012年3月28日

肝臓転移した大腸がん の新治療法

難治性肝臓がんの生存率改善 微小球放射線塞栓療法

難治性肝臓がんの生存率を改善 微小球放射線塞栓療法

大腸がん(結腸がん・直腸がん)の約50%でがん転移が発生し、その多くは肝臓への転移でがんが広がってしまう。大腸がん患者の約90%は、最終的には肝臓へ転移したがんによる肝不全のために死亡するのだ。結腸がん・直腸がんは、2008年に米国で15万3000人、欧州では33万3000人が発症している。大腸がんは食生活に関連が大きいがんで、アジアでは韓国での発症例が多い。食の西洋化が進展した日本でも、非常に患者数が激増している がん なのだ。

この結腸がん・直腸がん から転移した難治性 肝臓がんに新しい治療方法の研究が進んでいる。

新しい肝臓がん治療方法は、「放射線塞栓療法」。「放射線塞栓療法」は選択的体内照射療法(SIRT)とも呼ばれ、放射性物質(イットリウム)の微小球(SIR-スフェアズのマイクロスフェア)を使って治療する新たな大腸がん治療手法だ。微小球は放射線医が体内に設置し、健康な肝臓組織には影響を与えずに選択的に放射線をがん患部へ照射する。

この新治療法を研究・推進しているのは、オーストラリアはシドニーのセント・ビンセント病院。研究結果は腫瘍外科学会の第65回年次がんシンポジウムで発表されたが、治療の難しい肝臓がん患者に対して、放射線塞栓療法によって生存率が2~3倍に改善したと報告された。

実験で新しいがん治療法の研究対象となったのは、化学療法が難しいとされた肝臓がん患者が中心の463人。
結果は、結腸がん・直腸がんから肝臓がんにがん転移した251人のがん患者のうち、放射線塞栓療法を受けた220人の患者の平均生存期間は11.6ヶ月。これに対し標準的または最高の支持療法を受けた31人の患者では6.6ヶ月。新治療法の効果で生存期間は約2倍。

その他の適用例は、胆嚢がん41例、神経内分泌がん40例、肝細胞がん27例、すい臓がん13例、乳がん11例、胃がん9例、その他のがん71例で、いずれも、がんが肝臓へ転移したがん患者212人。このうちSIR-スフェアズ微小球による治療を受けた180人の患者の平均生存期間は9.5カ月だったが、標準的または最高の支持療法を受けた32人の患者では2.6カ月だった。新治療法の効果で生存期間は約3倍。

研究報告では、放射線塞栓療法は、転移した肝臓がんに対して、従来のがん治療法よりも2倍~3倍の生存期間の向上と、大幅な病状改善に効果があると結論された。

今後は、放射線塞栓療法の評価についてさらに大規模の治験を実施しつつ、さらに肝細胞がんについても試験が行われる予定だ。

自動追尾する高精度肺がん治療

日帰りでがんを治療できる超高精度スナイパーマシンとは!?

新世代の放射線がん治療機器「サイバーナイフ」を用いた 切らない日帰りがん治療の普及が始まった。
「サイバーナイフ」は放射線治療機器の一種だが、モニターシステムを統合した大掛かりな がん治療システムだ。
「サイバーナイフ」の放射線発射装置である「リニアック」は、放射線を先端からがん細胞に最小5mmの放射線ビームを放つ心臓部だ。このビーム口径は世界最小クラスの細さでこれがまず治療精度を高めている。

そして、横たわるがん患者の周囲を「リニアック」が 1200通りの角度と方向からがん細胞に向かって細い放射線ビームを照射する。がん細胞だけを様々な方位から細く狙い打つことで、正常細胞のダメージを最小化しつつ、がん細胞だけに繰り返し、細く放射線を照射する治療機器なのだ。

もう一つのサイバーナイフの特色が呼吸によるがん部位の自動追尾だ。呼吸することで肺だけなくがん患部も微妙に動いてしまうが、このがん患部の動きに同期して、放射線も細かく動きながらビーム照射されるのだ。
がん患部を追尾する情報は、天井に取り付けられた3台のカメラからの情報から分析される。 2台はX線カメラで、残る1台が赤外線カメラ。

患者は、体の動きが最小化されるように固定用マット敷いたベッドに横たわり、 LEDライトをお腹に装着する。
システムは、体内のがんを直接に見ているのではなく、がん細胞の至近に「金マーカー」と呼ばれる目印が入れられている。金マーカーは、太さ1.1mm、長さ5mmの微小。この「金マーカー」が呼吸に合わせてがんと同じ動きをするのをX線カメラで追尾する。

金マーカーのトレースはX線カメラで行われるが、 X線を患部周囲へ投影し続けるのは放射線被爆となるので良くない。そこで体に害の無い赤外線カメラでLEDライトと金マーカーの距離と呼吸による動きの相関を記憶しておき、呼吸によって動きがん患部の位置を補足し、トレースし続けるのだ。サイバーナイフによるがん治療は1回30分間程度で、入院の必要も無い。 2週間で計4回程度の治療となる。

1.5cmの肺がんが、1ヵ月後にはがんが消えさった例もある

サイバーナイフで治療が可能ながんは、今のところ肺がん、脊椎がん、脳腫瘍などである。
残念ながら放射線に弱い粘膜を持つ消化器系のがんには使えないために、胃がん、大腸がん には使えない。
しかし、海外では乳がん治療にサイバーナイフを利用して効果が上がっているとの報告もある。今後は、乳がん に続き、肝臓がんやすい臓がんの治療への応用に強い期待が寄せられている。

切らずに、日帰り治療でがんを治す時代なのです。