Archive for 2012年10月18日

肺がん新薬の課題を解明

肺がん新薬ザーコリが効きにくくなる仕組みを、金大附属病院がん高度先進治療センターが解明した。この肺がん新薬ザーコリはがんを小さくする高い効果があるが、治療開始から1年前後で効かなくなる問題があった 。しかし、既存の抗がん剤を併用することで効能を維持できる可能性が発見されたことで、再発を防ぐ治療法の開発に向けた一歩となりそうだ。

研究されているのは、国内で2012年5月末に販売が始まった治療薬「ザーコリ」(一般名クリゾチニブ)。体内のがん細胞に関連した特定の分子だけを攻撃する「分子標的薬」の一種で、がんを増殖させる未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子の働きを阻害する”肺がん特効薬”だ。この遺伝子を持つ肺がん患者には、非常に高い治療効果が現れることが分かっている。

今回の研究では、ザーコリの効果が落ちる原因として、ザーコリによってALK融合遺伝子の働きを止めた後も、 がん増殖に関わる「上皮成長因子受容体(EGFR)」に正常細胞から分泌される特定の物質が結合することで、 がん細胞が生き延びてしまうことを解明したのだ。

試験管内やマウス実験では、新薬ザーコリの効能が薄れても、 肺がんの分子標的治療薬「エルロチニブ」や、 大腸がん治療に使われる「セツキシマブ」を併用すると、がんが縮小することも確認された。

日本人のがん死亡原因の1位である肺がんは、年間約7万人が亡くなる。 肺がんに悩むがん患者に、ザーコリの効能を継続させるさらなる研究が期待される。

前立腺がんリスクの高い食事と調理法

50代後半の男性にリスクが高まってくる前立腺がん。 診断・治療法が進化したことで、死亡率は減少傾向だ。 前立腺がんは、進行が非常に遅いタイプが多いため、直接的な死因になる人はごく一部だけだ。 しかし、がん発症リスクを減らことは、男性共通の課題と言える。

多くの癌と同様に前立腺がんのリスクも食生活に密接に関連している。 タンパク質は動物性ではなく、豆腐などの植物性が望ましく、肉よりも魚での摂取が望ましい。

米国南カリフォルニア大学の研究報告では、 高温で焼き上げた肉の摂取は、明白に前立腺がんリスクを上昇させるとのことだ。

この調査は、対象者が1096人。うち、早期前立腺がん患者717人、進行前立腺がん患者1140人で比較した結果、 豚肉や牛肉などの肉を週に1.5回以上フライパンで焼いて食べる男性の 進行前立腺がんのリスクは、30%も高かったのだ。 また、フライパンではなく直火焼きなど高温調理による赤身肉を週に2.5回以上食べると、 前立腺がんリスクは更に高く、40%まで上昇する。

一方、同じグループで調べられた鶏肉のがんリスクについては、 フライパン調理では同じくリスクが上昇したが、直火焼きでは逆にリスクの低下傾向が発見された。

このがんリスクの原因は、高温調理でタンパク質から発生する「HCAs」と、 脂身のコゲ部分や調理の煙に含まれる「PAHs」という強力な発がん物質に起因していることが判っている。

つまり、鶏肉の発がんリスクが少なかったのは、比較的に低脂肪であるためにPAHsの発生が少なかったと推論された。 しかし、フライパンでの調理ががんリスクを上昇させる理由はまだ解明されていない。 いずれにせよ、焼き過ぎた肉は量を控えるべきであることは明白ちなった。

日本人の前立腺がん罹患率が米国の10分の1以下と低いのは、 日本の伝統食文化が焼き物に偏らず、食品と調理方法が多様であることが大きいのだ。