Archive for 2012年7月26日

海外の製薬会社が日本での抗がん剤新薬を後回しにする理由

日本での抗がん剤発売を欧米とほぼ同時にする取組みが拡がっている。

米ファイザーは肺がん用など5種類、スイス・ノバルティスは2種類を数年内に売り出す。日本では臨床試験(治験)に時間がかかり発売が海外よりも新薬の投入が3年近く遅れることが多く、海外で販売中の新薬を日本で使えない「ドラッグラグ」が社会問題になっていた。

そのため、厚生労働省が治験期間の短縮へ体制を見直す一方で、高齢化でがん患者の増加が見込めると判断した外資の製薬各社が、日米欧でがん新薬の治験を同時並行することで、日本での発売を早める方策を開始したのだ。

これまで日本での治験は、大規模な医療機関でしか実施できず、新薬の審査人員も不足していた。しかし、ドラッグ・ラグの解消要請を受けて、地方病院でも治験ができるようにするなど厚労省も改善を進めた。

外資の製薬大手各社が日本での治験を後回しとしてきたが、今後は日本での治験が早まることで抗がん剤新薬の発売も早まっていく見通しだ。

ファイザーは5年以内に腎細胞がん、白血病、肺がん、リンパ腫、乳がんに対する抗がん剤を日本で発売。それぞれの新薬は、欧米と日本を並行して進めた治験がほぼ後期の段階に入っており、厚労省の承認を得た後に、欧米と日本で同時期に発売される。

また、ノバルティスは2013~14年に血液がん「骨髄線維症」向けなど2種類の抗がん剤を発売する。新薬の治験は中期~後期の段階。

さらにスイス・ロシュからは、数年内に2つの乳がん治療新薬が、英グラクソスミスクラインからは筋肉に発生するがん治療薬などが発売さえる。全て、発売時期は欧米と大きな差が出ないとのこと。

世界最速で進む超高齢化の日本の抗がん剤市場は、 2019年には2010年対比で73%増の1兆1771億円に達する。高まる医療費は社会問題化している一方で、使えるがん新薬が早期に増えることは、がん患者と家族、関係者にとっては朗報と言える。願わくは、拙速な治験・承認で副作用等の薬害問題が発生しないことが望まれる。

損傷遺伝子の修復機能から新たながん治療法

細胞のがん化の原因になる損傷した遺伝子(DNA)の修復機能が解明された。

酸化や紫外線、放射能などの刺激が原因で、細胞が損傷を受けてDNAの構造が壊れた状態は「DNA鎖間架橋」と呼ばれ、細胞ががん化する原因となる。

通常は修復機能が働き、がん化を抑制しているが、損傷したDNAが正常に修復されないことで細胞が がん化してしまうのだ。

しかし、がん化抑制に重要な役割を果たす遺伝子の機能が解明された。

この成果によって、 がんをはじめとするDNAの修復異常が引き起こす病気への新たな治療法や抗がん剤新薬の開発が予見され、さらに発がんの基礎的なメカニズムが解明に貢献すると期待されている。

「がん抑制遺伝子」は早稲田大学理工学術院の研究グループが解明した。