Archive for 2012年8月6日

がん増殖させる特殊な細胞の発見から新薬へ

がん再発の原因となる細胞が特定された。以前から仮設で指摘されてきた「がん幹細胞」の存在を裏付けた画期的な発見である。「がん幹細胞」は、がん全体の成長を促している特殊な細胞で、「がん幹細胞」を除去することで、がんの再発や悪化を防御できる可能性が極めて高い。

研究では、マウスに腸がんと皮膚がん、脳腫瘍の一種を発症させ、がん細胞の成長過程を分析した。その結果、がん細胞の一部に、がん全体の成長を促している特殊な細胞が存在していることを確認。この細胞こそが、体のいろいろながん細胞の元になる「がん幹細胞」であり、このがん幹細胞を取り除かないと、がんの進行や再発は防げないことが証明されたのだ。

今後は、がん幹細胞を標的とした新たな治療法や抗がん剤新薬の開発が多いに期待され、がん増殖やがん再発の治療が飛躍的に進展する可能性を秘めている。

研究は、ベルギーのブリュッセル自由大学、米国テキサス大学のLuis Parada研究チーム、オランダ・ユトレヒトのHubrecht研究所の合同チームが実施し、成果は、科学雑誌「ネイチャー」と「サイエンス」に同時に掲載された。

がん治療効果が40倍高いプラチナ製剤新薬

既存の抗がん剤に比べて4倍から40倍の強さでがん細胞に働く新薬が実証された。

抗がん剤新薬「Phenanthriplatin」は、 60種類のがんに対して実証実験がなされ、効果が確認れたのだ。

実験を実施したのは、米国 マサチューセッツ工科大学。抗がん剤「Phenanthriplatin」は、プラチナをベースにした新薬だ。

プラチナをベースにした抗がん剤は、プラチナ製剤と呼ばれ、遺伝子DNAに直接作用するためとても強力な抗がん剤として幅広く使われている。プラチナ製剤として実用化されている抗がん剤としては、シスプラチンが最も有名だ。シスプラチンは、米国・カナダで1978年に承認されて以降、1983年にも日本で承認、プラチナを利用した抗がん剤化学療法として最もよく使用されてきた抗がん剤だ。シスプラチンは、精巣腫瘍に最も効果があるとされているが、それ以外にも、リンパ腫、卵巣がんや肺がん胃がん、食道がん、膀胱がん、前立腺がんなど多くのがんの治療にも用いられている。

今回開発された新薬「Phenanthriplatin」が、既存のシスプラチンよりも効果が高い理由は、シスプラチンよりもがん細胞内に入り易いことに加え、がん細胞がDNAからRNAに転換する遺伝子発現を抑制する効能があるからだ。

また、シスプラチンには、多くの抗がん剤に発生する副作用である骨髄抑制(血球や血小板の生産不良)はそれほど強く発現しないが、中毒性副作用で腎臓が損傷するリスクや、使用を続けることで腫瘍が薬に対して抵抗力をもってしまうという弊害があった。

新薬「Phenanthriplatin」は、これらの問題点が改善されている見通しだ。

つまり「Phenanthriplatin」は、現在に抗がん剤として一般的に使われているプラチナ製剤のシスプラチンを代替し、より効果的にがん細胞を攻撃し、副作用の軽減された新薬となる可能性が高い。さらに、同じプラチナをベースにした抗がん剤を投与しつづけることで腫瘍が薬に抵抗力をもってしまうことを防げぐ効能も期待されている。