Archive for 2012年8月22日

抗がん剤の働きを強化するジュース

1日230g程度のグレープフルーツジュースを摂取すると、抗がん剤の効果を高められることが判った。グレープフルーツに含まれている「P450酵素」の働きで、抗がん剤が体内で分解されるスピードを遅らせ、効果が持続できるのだ。そのため、同量の抗がん剤でも効果が高く、抗がん剤の投与量が削減できる可能性があることから、がん患者の副作用も軽減でき、それは治療費を低減できることに繋がる。

シカゴ医学大学の研究者が実施した実験では、既に有効な治療法が無いレベルまで進行しているがん患者=末期がん患者138人を対象として、3つのグループに分け、

  1. 抗がん剤シロリムスとグレープフルーツジュース
  2. シロリムスと薬物代謝を遅らせるケトコナゾール
  3. シロリムスのみ

を投与した。

実験の結果は、グレープフルーツジュースには、腸内酵素を阻害することで、抗がん剤シロリムスなどいくつかの薬が分解されるまでの時間を遅らせる効果が確認されたのだ。効果は数時間程度発揮され始め、数日間連続することも判った。

シロリムスは、元来は臓器移植の拒絶反応を防ぐ免疫抑制剤として開発されたが、 進行肝癌、腎細胞癌の治療に効果が期待されている。

また、グレープフルーツジュースを治療に利用する最大の利点は、過剰摂取のリスクがなく、毒性もないということにある。

難治性乳がんに効果的は抗がん剤併用治療

乳がんと腎臓がんに新治療法が発見された。

乳がんと腎臓がんの治療に既存の抗がん剤である「デシタビン」と「ロミデプシン」を併用投与することで期待できることを発表した。

「デシタビン」はDNAメチル化阻害剤のひとつ、「ロミデプシン」はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤のひとつで、血液がん治療剤としてはすでにFDAの承認を受けている。

研究では、「デシタビン」と「ロミデプシン」の単独使用ではがん細胞は死なないが、2剤を併用することでがん細胞の増殖を止め、がん抑制遺伝子が活性化されることが発見されたのだ。

がん抑制遺伝子とは、がんの発生を抑制する機能を持つタンパク質をコードする遺伝子。がん抑制遺伝子に欠失、点変異などの変化により機能障害が生じた場合には、直接的に腫瘍化の原因となってしまう遺伝子なのだ。

併用での実験では、トリプルネガティブ乳がんおよび腎臓がん細胞の異なる細胞株を全て死滅させる「sFRP1遺伝子」を活性化させるという結果が得られたという。

このがん新治療法だけでなく、 sFRP1遺伝子のほかのがん治療への応用に関しても研究は勧められる予定で、 sFRP1遺伝子を利用した治療法が確立すれば、がん治療は飛躍的に前進する可能性が高い。

世界中から新しいがん治療法に期待が高まっている。研究は、米国ロチェスター市の総合病院メイヨークリニック(Mayo Clinic)で実施されている。